時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

STAP細胞のミステリー

 STAP細胞をめぐる騒動は、理研による再実験と調査報告等を経て、ES混入説で一先ず落ち着きを見せていましたが、先日、小保方氏の著書が出版されたことにより、謎が謎を呼ぶ展開となっております。氏の著書を読んだわけではないのですが、聞き伝わる情報によりますと、STAP細胞の実在を訴えているそうです。

 STAP細胞をめぐるミステリーには、二つの側面があります。その一つは、STAP細胞、あるいは、極めて簡単な方法で刺激惹起性多能性獲得細胞を造ることができるSTAP現象が、実在するのか、否か、という生物学上の問いです。

 もう一つは、STAP細胞にまつわる一連の事件です。前者の解明は、今後の研究に委ねられますが(実在するならば再現できるはず…)、後者については、小保方氏の著書によって謎は深まるばかりです。何故ならば、仮に、STAP細胞が実在するとしますと、笹井氏の自死が説明できなくなるからです。公開された笹井氏の遺書によりますと、「STAP細胞を必ず再現してください」とあり、この文章は、STAP細胞が再現されなかったことを示唆しています。

 報道によりますと、笹井氏が死を選んだ理由は、STAP細胞の再現に失敗したが故の失意にあったはずです。ところが、、仮に、小保方氏が主張するように、STAP細胞、あるいは、STAP現象を抹殺する陰謀があって、その陰謀によって、再現できたにも拘わらずに隠蔽されたとしますと、上述した笹井氏の遺言と矛盾します。

 したがいまして、STAP細胞が再現できなかったことを苦にしたという理由では、笹井氏の自殺を説明することができなくなるのです。さらに、笹井氏の死は、他殺ではないか、という説も浮上してくるかもしれません。ミステリーにはよくある”誰かが嘘を吐いている”という状況なのですが、果たしてこのミステリーには、最終ページがめくられる日は来るのでしょうか。

 日本国の科学界の信用を揺るがす大事件であったのですから、STAP細胞をめぐる二つのミステリーは、どちらも解明すべき重要問題です。特に、後者の問題は、ES細胞の窃盗のみならず、より重大な刑事事件にも発展しかねないのですから、警察による解明が待たれるところです。

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