時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

経済

誰が円を買っているのか

一般的には、一国の通貨は、その国の経済力を反映しており、特に、輸出が好調な時には、決済通貨としての需要が通貨高をもたらします(決済通貨が自国通貨建ての場合)。しかしながら、現在の円高は、この一般的な説明から大きく逸脱しています。円高の原因…

労働者の国に労働者の権利を教える本末転倒

最近、中国で労働争議が多発していることを受けて、中国に進出している日系企業では、日本式労働組合の手法を教えるべきという意見も聞かれるようです。プロレタリアート独裁を掲げて建国した国の国民に、労働者の権利の守り方を教えなければならないとは、…

外国人の大量採用―パナソニックの吉凶は?

パナソニックでは、新卒採用の8割を外国人にするという大胆な方針転換を発表したそうです。その方法とは、1100人の現地採用の「グローバル採用枠」を設けたうえで、残りの290人についても、積極的に外国人を採用する、というもののようです。 事業の…

「強い経済・財政・社会保障」はトリレンマ?

ジレンマという言葉はよく耳にしますが、三つの物事を同時に達成することができないことは、トリレンマと呼ばれています。管首相は、首相就任の会見で、強い経済、財政、社会保障を目指すと宣言したそうですが、この三つの目標もまた、トリレンマなのではな…

宮崎牛を全力で守るのが政府の務め

宮崎県で発生した口蹄疫について、山田副農林大臣は、49頭の種牛の処分に踏み切らない宮崎県に対して、不満を述べているそうです。この政府の態度、どう考えてもおかしいと思うのです。 口蹄疫の発生については、予防を怠った政府側にも責任があるそうです…

日中ネット通販のリスク

本日の新聞朝刊一面に、日中間におけるネット通販の”市場統合”が取り上げられていました(本日付日経新聞朝刊)。歓迎ムードの記事なのですが、このネット市場の統合には、セーフティーネットがないという問題点があると思うのです。 EUでは、80年代に市場…

国債増発が日本の企業を変えた?

赤字国債の発行に伴うマイナス面ついては、これまで、各方面から指摘がありますが、日本企業の経営の在り方にも、若干の影響を与えたのではないかと思うのです。これは、あくまでも仮説ですが・・・。 政府が国債を大量に発行しますと、それは、金融機関ある…

中国の市場経済化が万国の労働者を苦境に?

民主党政権では、労働政策として、最低賃金の引き上げ、製造業への派遣禁止、再就職支援・・・など、さまざまな政策を総動員しています。しかしながら、日本国が抱えている雇用問題の根本原因は、人件費を武器とした中国の急激な経済発展にあることを考えま…

民主党政権の産業政策は日本経済の下請化?

最近の政府が打ち出している政策から推測しますと、もしかしますと、民主党政権は、日本国の経済全体を下請化しようとしているのではないかと疑ってしまうのです。 中小企業に対しては、法人税の引き下げを約束しながら、大企業に対しては、製造業の派遣禁止…

日本国はテーマパークになるのか

観光立国を目指して、前原国交相は、中国人の個人旅行の年収制限などを緩和する方針を示したそうです。観光産業が、将来性のある産業であることは認めるところなのですが、日本国が、外国人観光客向けに演出された”テーマパーク”にならないよう注意すべきと…

グローバル化を否定した東アジア共同体とは?

民主党の鳩山代表は、グローバル化を否定した上で、政権発足後の対外政策として積極的に東アジア共同体の建設に取り組むと伝えられております。鳩山氏代表が、アジアの市場統合ではなく、通貨統合を強調する理由は、アジアの現状を見ますと、必ずしも地域の…

民主党の移民推進政策で労組は?

昨日、民主党の鳩山代表から、移民受け入れの整備を進めるとの発言があったそうです。もし、これが、事実であるならば、民主党の支持基盤である労働組合は、この労働市場開放政策にどのように反応するのでしょうか。 かつては、共産主義の生みの親であるマル…

良い規制と悪い規制

規制緩和という言葉は、市場の自由化や競争力の強化と同義として語られがちです。しかしながら、必要な規制まで廃止してしまいますと、市場が混乱し、経済危機や金融危機を招くことも確かなようです。そこで、良い規制と悪い規制とを区別してみることにしま…

雇用の確保vs.最低賃金上げ

民主党は、最低賃金を平均1000円に上げることを選挙公約としてマニフェストに記載するそうです。しかしながら、この政策には、いくつかの問題点がありそうなのです。 (1)雇用の海外流出 現在の最低賃金は、全国平均で703円(2008年)というこ…

郵政民営化には工夫が必要であった

「国家公務員共済組合連合会(KKR)」が保有する不動産物件のうち、「郵政物件」と呼ばれる日本郵政共済組合が保有していた施設を一括売却したところ、取得した企業グループによって転売が繰り返されていることが問題となっているようです。郵政民営化に…

「高速道路1000円」―景気対策としての効果は?

連休中の行楽地への足は、高速道路の料金を一律1000円とする政策のためにか、車の利用者が増加し、鉄道の利用者は減少したと報じられております。果たして、景気対策として、この政策は、どの程度評価できるのでしょうか。 連休中の状況を見る限り、高速…

政府の株買い取り制度のリスク

政府は、追加経済対策として、株価を維持するための株買い取り制度を新設するようです。しかしながら、この制度には、泥沼に陥るリスクもあると思うのです。 (1)買取株式の選別問題 素案によりますと、この制度は、首相直轄であるものの、具体的な決定は…

政府が国債を発行すると株価が下がる?

数か月にわたって、日本国の株価は低迷を続けており、政府は、株価の買い支えのために公的資金を投入する案まで検討しているようです。しかしながら、もしかしますと、株価買い支えの政策は、効果がないか、あるいは、逆効果かもしれないのです。 何故ならば…

政府もまたバブリーなのでは?

いわゆる”新自由主義”と称される”レッセ・フェール”、つまり、ルールなき市場主義はいただけませんが、その一方で、政府が大規模な財政出動をすれば、必ず景気は回復するという主張にも、怪しさがあります。何故ならば、そこには、金融バブルに踊った人々と…

経済モデルの過信は禁物

何故、いわゆるケインズ主義に基づく財政拡大策は失敗したのか。もし、経済モデルが100%絶対に正しいとするならば、どのような酷い不況に陥ろうとも、どの国も、労せずして景気を回復させることができるはずです。しかしながら、実際には、そう簡単には…

内需拡大とODAの不思議

本日、日経新聞の社説「アジア経済再生への日本の役割は重い」を読んでおりましたところ、いささか疑問な点がありました。それは、日本国の内需拡大策として、ODAによる貢献を薦めていることです。 それでは具体的に、どのような点が疑問であるかと申します…

定額給付金の経済効果は検証を

民主党が参議院での採決に合意したことで、定額給付金を含む第二次補正予算は成立の見通しが高まったとのことです。国民の7割以上の反対を押し切って実施されるわけですから、政府は、政策の結果を検証し、国民に報告しなければならないと思うのです。 以前…

”新自由主義者”の功罪

自民党内では、”新自由主義者”あるいは”上げ潮派”と呼ばれた人々が、かつての勢いをなくし、孤立化しているとの報道がありました(産経新聞本日付朝刊)。それでは、何故、”上げ潮派”は支持を失ったのでしょうか。 小泉内閣が郵政民営化を訴えたとき、多くの…

経済システムの総点検を要する金融危機

金融危機への対応として、政府は、矢継ぎ早に緊急市場対策を実施すると報じられています。もちろん、対処療法も必要なのですが、世界経済全体を見渡した長期的な取り組みも検討すべきではないか、と思うのです。 たとえば、国際通貨制度ひとつをとりましても…

日本国のドル買い介入は世界を救うか

本日、ついに日経平均株価が952円下落し、円高も一時1ドル100円を切ったと伝えられています。日本国は、輸出依存型経済ですので、海外市場の景気後退と円高の亢進による輸出不振への懸念が、株式市場での大幅下落につながったようです。 ところで、日本…

金融市場改革には慎重に

つい最近まで、国際競争力を強化するために、証券市場、商品市場、外国為替市場の垣根をなくし(将来的には排出権取引市場も?)、総合市場を造ろうとする改革案が提案されていました。しかしながら、経済を取り巻く状況が大きく変化した現状にあって、はた…

移民労働者受入論の落とし穴

批難の声が高い移民受入論ですが、社会的な摩擦の問題の他に、移民労働者受け入れ論には、重大な見込み違いがあると思うのです。それは、予測に反して、人材が集まらないという問題です。 もちろん、移民労働者であるからこそ、厳しい労働にも耐えてくれる、…

公正取引委員会は市場の守護者

家電量販店のヤマダ電機が、公正取引委員会から独禁法違反の廉で、排除措置命令を受けることになりました。メーカー側の16万人を”ただ働き”させた優越的地位の濫用が問題となったのですが、これは、平たく言いますと、ヤマダ電機の”業界第一位”なる座は、”…

日本版政府系ファンドは既に存在している?

中東諸国や中国の政府系ファンドの投資拡大を受けて、日本国でも、政府系ファンドの設立が検討されています。しかしながら、よく考えてみますと、もう既に、日本にも政府系ファンドが存在しているようなのです。 それは、公的年金の積立分を運用する”年金積…

地上げ屋は地上げ行為で取り締まりを

暴力団を経済活動に使うと、社会的信用を失い、あとあと根深い禍根を残すことは、バブル経済で痛いほど企業は経験したはずです。にもかかわらず、再び地上げ屋を雇うような二部上場企業が出現するとは、歴史の教訓が生かされなかったことになり、まことに残…