時事随想抄

歴史家の視点から国際情勢・時事問題などについて語るブログ

司法

小沢氏は魔女ではなく魔王では

小沢氏に対して起訴相当の議決を行った検察審査会に対して、小沢氏もその支持者も、あたかも冤罪事件のような口ぶりで非難しています。しかしながら、この非難、説得力が薄いと思うのです。 小沢氏自身は、”これは、権力闘争である”と述べて、暗に、仙谷官房…

小沢氏強制起訴―頼りになるのは国民のみ

ついに東京第5検察審査会では、小沢氏に対する強制起訴が決定されたようです。検察も政治家もあてにはならず、結局、頼りになるのは国民のみ、ということになりそうです。 小沢氏サイドは、フロッピーの改竄事件といった検察の不祥事を、自らの有利な方向に…

小沢氏は司法権を握りたい?

小沢氏の政治資金規正法違反の疑いに対しては、検察審査会の判断が待たれるところですが、「起訴相当」とされたとしても、議員を辞職するつもりも、党を離れるつもりもないそうです。その上、あろうことか、首相の”最高裁判所の判事の任命権”にまで言及した…

千葉法相の死刑執行は政治利用

西欧諸国で死刑が廃止されている背景の一つには、政敵の排除といった政治的な理由によって死刑制度が利用されてきたという暗い歴史があります。筋金入りの死刑廃止論者であるはずの千葉法相が、死刑執行に及んだ背景にも、政治的な理由があったとしますと、…

検察審査会を”暗黒”と評する不思議

小沢氏の政治資金規正法違反事件に対して、”起訴相当”という議決を行った検察審査会を”暗黒”と評して非難している方々がいるようです。しかしながら、その見方は、逆なのではないかと思うのです。 もし、検察審査会が、絶対的な権力をもち、司法権までの行使…

法治より人治の千葉法務大臣?

法務大臣の役割とは、法秩序を守ることであり、いわば、法の守護者の立場にあります。しかしながら、民主党内閣の成立によって誕生した千葉法務大臣は、その反対の道を歩みそうなのです。 何故ならば、法務大臣は、検事総長への指揮権の発動には前向きである…

守秘義務を外せば社会の問題が見えてくる

昨日からスタートした裁判員制度では、裁判員には、裁判の公平性を保つために口外を禁じる守秘義務が課せられています。陪審制度の発祥の地であるイギリスでも厳格な守秘義務と報道規制がある一方で、アメリカでは、言論の自由を尊重して、こうした義務や規…

裁判員制度―今後の検証こそ大事

司法制度の制度設計は、人が人を裁かなければならない、という点において、他の分野よりも宿命的な難しさを背負っています。裁判員制度もそのひとつの試みなのでしょうが、裁判員制度を評価するには、今後の検証こそ大事と思うのです。 裁判員制度の導入が積…

裁判員の守秘義務―開かれた司法vs.裁判員の安全

昨日、テレビの報道番組でニュースキャスターを務める方々が連名で、開かれた司法の実現を求めるアピールを公表したと伝えられています。この中で特に強調されたのは、裁判員の守秘義務が、判決までのプロセスを隠す役割を果たしてしまう、ということのよう…

痴漢逮捕は冤罪が多発しやすい

先日、最高裁判所において、痴漢行為で現行犯逮捕された大学教授の方に無罪の判決が下されました。実のところ、痴漢事件ほど冤罪が発生しやすい事件はないのではないか、と思うのです。 そもそも、こうした事件には、(1)本物の痴漢行為、(2)何らかの目…

中国の「人権擁護計画」は犯罪者向け?

珍しくも、中国が、人権保護を目的として「人権擁護計画」なる方針を公表したと伝えられています。この計画によって、過酷な人権弾圧が収まるであろうと期待してみたのですが、そうでもないようです。何故ならば、人権擁護の対象は、犯罪者に限りられている…

無抵抗な子供の殺人の罪は重いのでは?

昨日、秋田県で起きた児童連続殺人事件の二審の判決があり、被告は、一審と同様に、無期懲役を言い渡されたと言います。裁判官は、死刑相当とは言えないと述べたとされていますが、無抵抗な子供の殺人は、大人の殺人よりも罪が重いのではないか、と思うので…

無期懲役判決が後押しする裁判員制度?

昨日、前代未聞の残酷な犯罪として報道された”ばらばら殺人事件”の判決が、東京地裁において言い渡されました。求刑は死刑でしたが、大方の予想に反して無期懲役というものでした。 被告自身も死刑を望んでおり、伝えられる行為には目を覆うばかりの残虐さが…

裁判員制度と宗教という不安定要因

裁判制度において最も大切なことは、中立・公平であるということです。ところで、ニュースによりますと、現在、各宗教とも裁判員制度への対応について、議論が起きていると言います。そうして、その結果次第では、裁判の中立・公平性に多きな影響を与えそう…

名誉棄損罪という罠

報道によりますと、偽メール事件の責任をとる形で国会議員を辞職された永田氏が、自ら命を絶たれたと言います。まことに痛ましきことですが、永田氏が、創価学会の不正選挙発言で有罪判決を受けていたことを考えますと、名誉棄損罪のあり方を考えざるを得な…

国籍法改正案賛成論への反論

国籍法改正案に対する賛成論は、法の下の平等=嫡出子と婚外子の平等=日本人と外国人の平等という構図に依拠しています。全体からこの部分だけを切り取りますと、本法案は、”改正”と見えるかもしれません。しかしながら、一面だけ、あるいは、一部の立場の…

日本国の国益を損なう国籍法改悪

既に、多くの方々から欠陥法案であることが指摘されてきた国籍法案ですが、具体的に、どのような日本国の国益の損失が考えられるのでしょうか。 1.内政干渉・安全保障の危機 先日、中国において、何を意図してか、日本における日本人と中国人との婚姻数の…

国籍法と家族法の境界を壊した最高裁判所

国籍法改正案には、認知ビジネスの懸念を始め、様々な問題点がありますが、そもそもこの問題の根源には、最高裁判所が、国籍法と家族法(民法、戸籍法…)の役割の違いを識別していなかったことが挙げられるのではないでしょうか。 国籍法とは、国民の枠組み…

裁判員制度導入手順の誤り

裁判員制度の導入を来年に控えながらも、国民の中には、制度に対する不信感が根強くあるようです。その理由は、裁判員制度の手順を大きく間違えたからなのではないか、と思うのです。 そもそも、司法の”民主化”なるものへの疑問は別に論じるとしても、まずは…

精神鑑定の功罪

罪を犯した人に刑罰を科すためには、その人に責任能力が備わっていなくてはなりません。つまり、犯人の自己コントロール能力の程度を測るために、裁判に先立って、精神鑑定が行われることになるのです。しかしながら、この制度、どこか奇妙な制度にも思える…

裁判員制度―国民の選択なき民主主義

裁判員制度の導入には、司法への国民の参加、しかも、無作為の抽選制こそが民主的で先進的であるとする思い込みがあるようです。ところで、抽選制とは、言われるほど、合理的であり、また、民主的な制度なのでしょうか。 古代ギリシャのアテネでは、”抽選制…

裁判員は義務か、権力の行使か

裁判制度をめぐっては、現代の”徴兵制”に喩えられるように、国民の義務の側面が強調される傾向にあります。その反面、裁判権とは、そもそも、国家権力の一つであることに思い至りますと、抽選で選ばれた人が、この権限を行使することは、是か非か、という問…

死刑廃止が目的の裁判員法改正案?

裁判員制度の施行に先立って、「死刑廃止を推進する議員連盟」は、死刑判決を言い渡す条件を裁判官と裁判員両者の全会一致とする法律改正案を提出する予定と言います(本日付日経新聞朝刊)。この法案の本当の目的は、死刑の廃止にあると思われるのです。 そ…

裁判員制度の新聞広告は逆効果?

本日の朝刊には、新聞各社とも、裁判員制度に関する広告を一面を割いて掲載していました。裁判員制度は国民に負担をかけるものではないことをアピールしようとしたのでしょうが、その内容を読んでみますと、むしろ、逆効果なのではないか、と思うのです。 1…

裁判員制度導入の前に法学の教科化を

2009年から導入予定の裁判員制度では、抽選で選ばれた裁判員が、事実の認定のみならず(事実認定のみですと陪審員制度)、法律の適用をも判断することになります。考えてみますと、これまで、国民は、義務教育課程にあっても、法律についての纏まった知識を…

死刑廃止の前に殺人の撲滅を

死刑廃止につきましては、欧州諸国が積極的に推進キャンペーンを展開していることもあって、我が国でも、廃止に賛成する論者は少なくありません。しかしながら、死刑判決にあたいする犯罪が、他者の生命を奪うという非人道的な行為であることを考えますと、…

ヨーロッパ諸国の死刑制度の原風景

死刑制度については、ヨーロッパ諸国が人道を掲げて廃止を主張していることから、我が国でも、最近では、廃止論が多く聞かれるようになりました。死刑制度とは、人の生命がかかわる問題ですので軽佻には議論できないのですが、議論を進めるにあたって、まず…

裁判員制度と民主主義との奇妙な組み合わせ

裁判員制度の導入が決定された時、その理由として、司法の民主化が真っ先に挙げられました。しかしながら、この制度に見られる司法と民主主義との組み合わせは、何か、とても奇妙なのです。 司法制度においては、何にもまして、中立性と公平性を確保すること…

憲法違反かもしれない裁判員制度

国民の中から抽選で裁判員を選ぶという裁判員制度は、2009年から制度の運営が開始される予定のようです。議論らしい議論なくして導入が決定されたのですが、この制度の導入には、どうしても腑に落ちない点があるのです。 まずはじめに疑問としてあげられるの…